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会計士・税理士

公認会計士の成り立ち

日本の公認会計士制度は、戦後、アメリカのCPA(Certified public accountant)制度をならって作られたものです。今回、日本の公認会計士の源流となったアメリカのCPAの成り立ちについてまとめてみたいと思います。

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約130年前の1800年代後半、イギリスからアメリカに移住した者の中から自称会計士を名乗る者が現れ、混乱した帳簿の整理、財産評価、新会社の会計制度の設計などを行っていました。

彼らは複式簿記に精通していたため、産業界で会計関連サービス需要が高まる以下のような領域に徐々に職域を拡大していきました。
①企業からの依頼にもとづく監査(法律で義務付けされない監査という意味で「任意監査」といわれます)
②企業買収時における被買収企業の財務調査
③税務

並行して、会計士たちは自分たちの職業を法律で明確に位置づけるよう活動し、1896年ニューヨーク州で全米初のCPA法が成立しました(その後、1921年にはすべての州がCPA法を有するに至ります)。

他の職業同様、CPAが行う業務は依頼人のために行なうものなのですが、監査においては依頼人である企業の経営者のためということにとどまらず、監査報告の利用者である投資家のためという面を併せ持ちます。
この点、当時の法律で強制されない監査は経営者の完全な支配下での監査となり、十分な独立性をもつものではなく、投資家目線からは適切な監査が為されていないのではないかとの社会的批判がありました。

1929年世界恐慌の引き金となったアメリカの株価暴落により、証券取引所はショック状態に陥り、上場会社の会計報告の改善が喫緊の課題となり、一連の諸対応の流れの中で、法律により上場会社へのCPA監査が義務化されました(法律で義務付けされる監査という意味で「法定監査」といわれます)。

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ここまでの歴史を振り返ると、CPAは会計関連の業務全般に関するプロフェッションとして資本主義経済の中から需要に応えて生まれた職業であり、彼らが実施していた業務のうち、監査はその公共性ゆえに後に法定化されたと整理できます。

公認会計士は監査をその独占業務とすると説明されることがあります。この職業の成り立ちに遡ると、対象となる職域は監査の外にも広がっていることに気づかされます。