独立開業は大海原に1人で船を漕ぎだすようなもの
私はサラリーマン生活に区切りをつけ独立開業を果たしたわけですが、実際に独立してみると、独立前後での大きな違いに気づきます。
サラリーマン時代、入社すると研修によるインプットが予め用意されており、現場に出てからも先輩や上司からのフィードバックによるOJT(On the job trainingの略、実務を通じたインプットの意)を通じて、専門家としての経験値を高めることができていたのだと思います。
同時に会社からは、経験に応じて期待される役割が指示され、期待にうまく応えることができたかどうか、評価を受けていました。
これは、会社に入る前の学校という場でも同じ構図があり、授業などでのインプットがあって、テストでその定着度を測るということがされていました。
独立後は、予め用意されたインプットはありませんし、誰かから期待役割を指示されることもありません。
このため、会社や学校では、ある意味、集団に守られながら進んでいたものが、独立を機に、急に自分1人で大海原に船で漕ぎだしたような感覚に襲われます。
「あるべき」をどこにおくか
サラリーマンや学生は「期待役割」、言い換えると「あるべき」を集団から与えられますが、独立後は自分で設定するしかありません。
このとき、身近に自分もこうなりたいというロールモデルがあればよいですが、人それぞれ個性も違いますし、自分にピタッとくるロールモデルに出会うのはなかなか難しいのではないでしょうか。
そういった場合、ある人のここの部分は参考にしたい、別の人のここの部分は参考にしたいというように、複数の人の一部分をロールモデルとして取り入れ、そこに自分のこれまでの経験を織り交ぜて「あるべき」を作っていくことが考えられます。
ロールモデルは近くにいるとは限らない
この際、ロールモデルを自分の同業種に限る必要はありません。
私の場合、個人で経営する会計事務所が同業種になりますが、それぞれの事務所の所長の方がどのような仕事をされているのか、外部からは本当のところは分かりません。
修行目的でその方の会計事務所に一定期間勤めてみれば、仕事ぶりや価値観を伺い知ることができますが、それでは多くの方と接点をもつことは難しいでしょう。
私から見て、他の会計事務所は業種が同じという意味では近い存在ですが、その中身を知るには遠い存在です。
では、どうするのがよいか?
いい考えが浮かばず、しばらく寝かせておいたのですが、最近、個人経営の会計事務所は同じく個人経営の飲食店と似ていることに気づきました。
個人でやっている飲食店にはその店の「味」というものがあります。
ここでいう「味」とは、料理の味を含むその店の特徴という意味です。
つまり、料理の味、内装や家具、お客の属性、オーナーの人柄や佇まい、これらが生み出す価値と価格のバランスなどがその店の「味」(=特徴)を形づくります。
私のお気に入りのイタリアンのお店は、
・料理の味はさることながら盛り付けも色どり豊かで絵のようにきれい(写真はこのお店のフンギピザです)
・決して華美ではないけれど落ち着いた内装と家具
・通ってくるお客様はそのお店での料理と雰囲気を味わいながら会話を楽しむ人たち
・これらを作り出すオーナーご夫婦の人柄
・価格は高め設定でありながら、価値に対してむしろ安く感じられる
これらの「味」はどれも感性に訴えてくるものなので、言葉で表すには繊細でとても難しいのですが、自分の事務所でも遠くて近いロールモデルとして活かしていきたいと思います。
この記事をご覧の皆様にも、どこかに遠くて近いロールモデルがいるのではないでしょうか。

